私たちは普段何気なく会話やメール、読書などを楽しんでいます。これらは全て聞こえやことばの機能を使って行われます。したがって、聞こえやことばの障害は目にはみえにくいのですが、社会生活をおくる上で深刻な問題を引き起こします。
言語聴覚障害は多種多様です。代表的な障害としては(1)聞こえの障害、(2)言語機能の障害、(3)話しことばの障害があります。その他、(4)食べたり、飲み込んだりすることの障害があります。
聞こえの障害では、話しことばが聞き取れないためコミュニケーションに問題が生じます。また、自分の話し声も聞き取れないため発音や声の大きさなどが不自然になり、円滑な意思伝達が難しくなります。先天的な聞こえの障害では、障害の程度にもよりますが、そのままでは日本語の習得に困難が生じます。
言語機能の障害には、ことばが年齢相応に育たない「言語発達障害」、“ことばが出てこない、意味がわからない”といった「失語症」があります。その他に記憶や注意、認知などが障害される「高次脳機能障害」も直接的、間接的に言語機能に影響します。いずれも脳の言語機能・高次の認知機能の障害によっておこり、円滑なコミュニケーションや学習、仕事の遂行などに影響を及ぼします。
話しことばの障害には、声のかすれや大きな声が出ないといった「声の障害」、発音が誤ったり歪んだり、呂律がまわらないといった「発音の障害」があります。脳血管障害、腫瘍、声帯ポリープなどさまざまな原因でおこります。不明瞭な発音や不自然な音声は聞き取りにくく、話しことばによるコミュニケーションに影響を及ぼします。
食べ物を噛んだり、飲み込んだりできない状態を「摂食・嚥下障害」といいます。食べ物が肺に入っておこす肺炎や食べ物による窒息など生命に危険を及ぼす可能性のほか、低栄養による体力・免疫力の低下、食べる喜びも失われます。
このように私たちが日常生活を送る上で欠かすことのできない、聞こえやことばの障害、嚥下障害を対象とし、障害のある方を支援する専門職が言語聴覚士です。言語聴覚士は専門知識・技術を用いて検査、訓練、指導・援助を行い、機能の獲得や改善、能力の回復・拡大を図り、障害のある方がよりよい生活を送ることができるように支援します。
きこえの障害を聴覚障害と言います。大人の場合、程度の差はありますが、高齢になるときこえは悪くなります。また病気や怪我できこえが悪くなる場合もあります。きこえが非常に悪ければ、サイレンの音やクラクションなど周囲の音が聞こえずに安全な生活が確保しづらくなることもあります。
大きな物音はきこえる状態であっても、アナウンスや電話がきこえなかったり、テレビの音を大きくしないと、また耳元で話さないときこえなかったり、たくさんの人がいるところでは会話がうまく理解できなかったり、など、いろいろな問題が出てきますので、日常生活に支障をきたします。
また小児の場合、私たちが何気なく使っていることばは自然に身についたわけではなく、乳児は周囲の大人の話していることばを聞くことでことばを覚えていきます。生まれつき耳のきこえが悪い場合には、ことばを確実に学習することが難しくなります。このようにきこえは私たちの生活になくてはならない機能です。
ことばの障害にはいろいろな種類があります。たとえば大人で、脳梗塞などの病気や交通事故などによる頭部の外傷などによって、それまで不自由なく使っていたことばが、聞いて理解できない、ことばとして思い出せずにうまく伝えられない、などの症状が出てくる失語症と呼ばれる問題があります。
そのような場合には多くの場合、文字を読んだり、書いたりすることも難しくなります。小児では発達全般が遅い場合もありますが、きこえには問題がなくても、なかなかコミュニケーションがとれない、ことばの発達が遅いなどの問題が出てくる言語発達障害があります。
このほかにも、たとえば舌ガンで手術をした結果、発音が難しくなる場合や、声帯と呼ばれる声を出す部分の病気や怪我によって発声に問題が出てくる場合、またスムースに話をすることが難しい吃音と呼ばれる問題も、ことばの障害に含まれています。
摂食・嚥下障害と呼ばれます。食べ物や飲み物を噛んだり、飲んだりすることが難しくなります。口から胃にいたるところまでのいろいろな部分の問題で起こってきます。
高齢になれば自分の歯がなくなり、唾液が少なくなり、また飲み込みに関係するいろいろな器官の動きが悪くなる等の理由で、餅で窒息しかける、水でむせる、といったことが起こりやすくなります。加齢ということだけでなく、いろいろな原因があります。どこに問題があるかによって、液体でむせやすい、あるいは固形物が食べにくいなど、症状もさまざまです。